ウクライナのゼレンスキー大統領は、日本時間の8月18日正午前、SNSで、アメリカとトランプ大統領と首脳会談を行う予定のワシントンに到着したことを明らかにしました。
この中で「アメリカやヨーロッパの友人たちとの共同の力がロシアを真の平和へと向かわせることを願っている」などと訴えました。
今回の会談には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランドの首脳のほか、EU=ヨーロッパ連合とNATO=北大西洋条約機構の首脳も出席します。
ロシアによる激しい攻撃が続くなか、会談に同席するヨーロッパ各国の首脳とともに、領土や安全の保証をめぐるウクライナの立場に理解を得られるかが焦点です。
フランスのマクロン大統領は、17日「ロシアが求めているのは、平和ではなく、ウクライナが降伏することだ」と述べて、ロシアに対する警戒感を示し、ウクライナにとって再びロシアから攻撃されないための安全の保証は不可欠だという考えを強調しました。
ゼレンスキー大統領SNS投稿 “平和は永続的でなければならない” ゼレンスキー大統領のXより
ウクライナのゼレンスキー大統領は日本時間の8月18日正午前、SNSに投稿し、トランプ大統領と会談を行う予定のワシントンにすでに到着していることを明らかにした上で「この戦争を迅速に、確実に終わらせたいという願いをみんなで共有している。平和は永続的でなければならない」としています。
そして「ウクライナ人は、みずからの土地と独立のために戦っている。ロシアは自分たちが始めたこの戦争を終わらせなくてはならない。アメリカやヨーロッパの友人たちとの共同の力が、ロシアを真の平和へと向かわせることを願っている」としています。
アメリカのトランプ大統領は8月17日、みずからのSNSに、18日にホワイトハウスで会談する予定のウクライナのゼレンスキー大統領について「彼が望めば、ほとんどすぐに戦争を終わらせることができるし、戦い続けることもできる」と投稿しました。
そして、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアについて「取り戻すことはできない」とした上で、「NATOにウクライナが加盟することもできない」として、ゼレンスキー大統領が譲歩することが必要だと主張しました。
一方で、別の投稿では「あすはホワイトハウスで大事な日となる。これほど多くのヨーロッパの首脳を一度に迎えたことはない。彼らを迎えることができて本当に光栄だ」としています。
ロシアのミサイルや無人機などによる激しい攻撃は依然続いていて、ウクライナの非常事態庁は、東部ハルキウで8月18日早朝、建物などが攻撃を受け、これまでに1歳半の女の子と16歳の男性を含む6人が死亡したほか、20人がけがをしたと明らかにしました。
欧米メディア プーチン氏がトランプ氏に行った提案の内容伝える
8月15日の米ロ首脳会談でプーチン大統領がトランプ大統領に対して行った提案の内容について、欧米メディアは連日伝えています。
このうちロイター通信は17日、複数の関係者の話として、ロシアの提案では、ウクライナが東部のドネツク州とルハンシク州から完全に撤退する代わりに、ロシアは南部のヘルソン州とザポリージャ州で前線を凍結することを約束すると伝えています。
また、ロシアは、ウクライナのスムイ州とハルキウ州で占領している狭い地域について、返還する用意があるということです。
関係者によりますと、ロシアは、2014年に一方的に併合したウクライナ南部クリミアについて、ロシアの主権を正式に承認するよう求めているということです。
一方、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構に加盟することは認めないが、プーチン大統領は、ウクライナが何らかの安全の保証を受けることにはオープンな姿勢を示しているようだとしています。
このほかロシアは、ウクライナで、ロシア語に対して公的な地位を与えることや、ロシア正教会が自由な活動を行う権利についても求めたということです。
アメリカのルビオ国務長官は、8月17日のテレビ番組で「概念と現実は別だ」として、18日の会談で詳細を議論したい考えを明らかにしました。
また、境界をどこに定めるかという領土をめぐる問題で合意することが欠かせないという考えを示しましたが「簡単にはいかないだろう。難しい問題になる」と指摘しました。
そして、ルビオ国務長官は「ゼレンスキー大統領とプーチン大統領が同じ場所に着席し、この戦争を終わらせる最終合意に達することができるよう十分に前進しなければならない」と述べ、両者が直接対話するための環境を整えることが重要だという認識を示しました。
アメリカのウィトコフ特使は8月17日、CNNテレビに出演し、15日の米ロ首脳会談で、ウクライナが再び攻撃されないために求めている安全の保証について議論したことを明らかにしました。
そのうえで、NATOに加盟する1国が攻撃を受けた場合、全体への攻撃とみなして対応をとる、集団的自衛権の行使を定めた第5条に言及しました。
ウィトコフ特使は「アメリカやほかのヨーロッパの国々が実質的に第5条を提供することができる」と述べ、ウクライナがNATOに加盟しなくても、ヨーロッパ諸国とともにアメリカが関与して、NATOと似たような安全の保証をウクライナに提供する用意があることを明らかにしました。
ウィトコフ特使は、ロシア側もこれに同意したとしていますが、アメリカが具体的にどのような形でウクライナに安全を保証するのか詳細には触れませんでした。
安全の保証については、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長も17日「トランプ大統領がウクライナのために第5条のような安全の保証に貢献する意思を示したことを歓迎する。EUを含む有志連合はその役割を果たす用意がある」と述べました。
また、同じく米ロ会談に同席したルビオ国務長官は、アメリカメディアとのインタビューで、ウクライナが求める安全の保証や国境線の問題が難題として残っているという考えを示し、18日に予定されているトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談で、こうした点が議論されるとみられます。
石破総理大臣は、日本時間の8月17日夜開かれたウクライナ情勢に関するヨーロッパの首脳らとのオンライン会合に参加しました。
オンライン会合には、ウクライナのゼレンスキー大統領をはじめ、フランスのマクロン大統領、イギリスのスターマー首相などヨーロッパの首脳らが参加しました。
この中で石破総理大臣は、アメリカとロシアの首脳会談や、18日に行われるアメリカとウクライナの首脳会談を念頭に、ロシアによる侵攻の終結に向けたトランプ大統領の一連の取り組みを歓迎するとともに、引き続きアメリカの積極的な関与が重要だという考えを示しました。
また「主権と領土の一体性に関わる問題は極めて重要で、ウクライナを含める形で議論がなされなければならない」と述べた上で、ロシアに対し前向きな対応を求めると重ねて強調しました。
さらに、日本としてウクライナへの支援を継続し、インド太平洋を含む世界の安全保障や国際秩序に禍根を残さないよう、各国と連携して対応していく考えを伝えました。
そして会合では、公正かつ永続的な平和の実現に向けて、今後も緊密に連携して取り組んでいくことで一致しました。
石破総理大臣は18日午後6時半すぎ、総理大臣官邸で記者団に対し「日本として今回の会談には大きな関心を持って注視しており、トランプ大統領の積極的な取り組みを歓迎する。率直な議論が行われ、ウクライナに公正で永続的な平和が実現する道筋ができることを強く期待している」と述べました。
その上で「わが国としては、ロシアと北朝鮮の軍事協力の進展を強く懸念しており、ウクライナ侵略を終結に向かわせる上で、インド太平洋を含む世界全体の安全保障、国際秩序に禍根を残さないことが重要だ。世界の平和と安全の維持が極めて重要であり、積極的に議論には参加していきたい」と述べました。
また、日本時間の17日夜行われたウクライナ情勢に関するヨーロッパの首脳らとのオンライン会合について「主権や領土など国家の根幹に関わる事項については、当事者のウクライナが関わる形で議論が進むことが極めて重要だと指摘し、おそらく参加したすべての国が共有した」と説明しました。
石破総理大臣は8月18日午後、総理大臣官邸で、ドイツのメルツ政権発足後、初めて日本を訪れているドイツのワーデフール外相と、およそ25分間面会しました。
この中で両氏は、ロシアによるウクライナ侵攻や中東など国際情勢についても意見を交わし、緊密に連携していくことを確認しました。
また、岩屋外務大臣は18日、東京都内でワーデフール外相とおよそ40分間にわたり「日独外相戦略対話」を行いました。
冒頭、岩屋大臣は「日独の連携や協力の必要性は、ますます高まってきている。ウクライナやインド太平洋の情勢はもちろん、経済安全保障をはじめとする両国の協力関係の深化についても突っ込んだ議論を行いたい」と述べました。
これに対し、ワーデフール外相は「日本は、アジアにおける特別なパートナーで、危機と紛争の時代において、この特別な関係が持つ重要性は大変大きい」と応じました。
会談で両外相は、先の米ロ首脳会談や、日本時間の19日に行われるアメリカとウクライナの首脳会談を念頭に、ウクライナでの早期の全面停戦と、公正かつ永続的な平和の実現に向けて、G7=主要7か国が結束する重要性を確認しました。
また、自由で開かれた国際秩序の実現に向けて、両国の外務・防衛の閣僚協議、いわゆる「2プラス2」の早期開催や、サイバー分野での協力など、安全保障面での対話を一層強化していくことで一致しました。